2015年にカフェを開業し、今年で9年目を迎えました。
開業当時49歳だった私は58歳になりました。
大学生だった長女は結婚し、次女も来年自活したいと言うようになりました。
時の流れは本当に早いですよね。
「いつかはカフェを」と漠然と抱いていた夢を勢いでオープンしてみたはいいものの、苦難や失敗の連続、それでもカフェオーナーとしての生活はすっかり私の一部になりました。
今の私にはカフェオーナー以外の道は考えられないし、お店を通して誰かの役に立ちたいという気持ちにも変わりがありません。
10人のカフェ開業希望者がいれば、本人の年齢はもとより開業の場所も理由も、これまで過ごしてきた環境も、ご家族構成も含め、すべてのバックボーンが違います。
なのでカフェ開業に際し「こうやれば上手くいく」というセオリーはありません。
どんな開業本を読んでも、ネットで検索しても、動画を見ても、成功の方法は見つかりません。
うまく行くカフェは、自分でやり方を模索していく外はありません。
でも「カフェオーナーになりたい」と一念発起してから10年、そして8年という月日を実際にフェオーナーとして過ごし、私が経験した「失敗」を知っておくことは、あなたのカフェの経営の「リスクヘッジ」の一つにはなると思います。
本日はそんな、「私の10年間の失敗」を一気にご紹介。
これから開業する人も、もう開業している人も心当たりがあるのではないでしょうか。
目次
開店景気を勘違いした
私のお店は9月11日にオープンしました。
工事期間は約2ヶ月でその間にお店の前に張り紙をしていたこと、オープン前からSNSを始めていたこと、何より子供たちの二学期が始まりいわゆる「ママ友」の方の時間的な余裕ができていたこともあって、ランチタイムは毎日ほぼ満席になりました。
俗に言う「開店景気」。
私は兵庫県伊丹市で開業していますが、この地は私の地元ではありません(主人の地元)
なので、知人や友人が来るといったことは少なく、故に自分のお店のコンセプトが受け入れられていると勘違いした私は、その間にもっと多くの人にお店を知っていただく努力、ご来店いただいた方に次の来店を促すリピート対策をしないまま、満席=翌日の仕込みに追われる毎日を送ることになり、客数が減り始めたとき自分のどこが間違っているのか全くわからず自分を責めました。
でも今考えると、あのときの私は「間違って」はいなかったのだと思います。
ただ、適切な時期に適切な努力ができなかったのだと。
「開店景気」はお客様に認められている証拠ではなく、開業に向けて努力した単なるご褒美。
本当の始まりは、お客様の数が下がり始めたときです。
箱を磨けばお客様が来店すると思っていた
カフェの持ち味はなんといっても「雰囲気」
「映えている」食べ物でも、食べてみると味は普通ってこと、ありますよね。
開業前にたくさんのカフェを周り、失礼ながらどのお店もメニューの美味しさについては「普通」だと感じていた私は、コーヒーやランチの味よりもお店の雰囲気が何よりも優先される、言ってみれば箱さえキレイにしていればお客様は来ると思っていました。
そのため内装工事や店内の備品消耗品に至るまでお金をかけすぎ、開業資金のうち運転資金に回すものが少なくなってしまいました。
でも、メニューの味がどこでも普通に感じるのと同じように、お店の外見もよっぽどない限りお客様にとっては普通。
世の中の「キタナシュラン」がお客様に人気なのはなぜでしょうか。
もちろん清潔感や手入れを怠らない丁寧さはとても大切ですが、それ以外に自分のお店がお客様にとってどんな位置づけで大切にされているのかをなるべく早い段階で見極めることはもっと大切です。
お店の雰囲気は外見からではなく内面から作られるもの。
その内面が自身の心にどう響くかでお客様はお店を選ばれるのだと思います。
良いものを安く出せばお客様はリピートすると思っていた
カフェを経営していく上で「お店の付加価値」をどう位置づけるかが大切ですよね。
私はそれを「ワンランク上の食材を手軽な価格で提供する」ということに置いてしまいました。
飲食店にとって原価率はお店を継続していくための命のようなもの。
「良いものを安く」はお客様にとって嬉しいことだけれども、それはスケールメリットのある大きなチェーン店だからこそできることで、個人店で同じことをやるとたちまち資金ショートに陥ります。
個人のカフェがすべきは「適正価格で提供すること」
そしてその適正価格に納得してくださるお客様に来店していただくことです。
原価率60%以上で「良いものを安く」提供する某チェーン店は、6回転以上しないと経営が成り立たないそうです。
原価率と回転率は切っても切り離せない経営上の数字です。
次回クーポンを連発した
先程私は「リピートのための努力をしなかった」と書きましたが、全くやらなかったわけではないんです。
ご来店いただいた方に「次回割引クーポン」なるものをお渡ししていました。
その他に「ドリンク無料」や「ケーキサービス」など。
値引き系のクーポンばかりです。
要は「安くしておけばリピートしてくださる」と思っていたのです。
でもそもそもが「良いものを安く」で原価率が高い上に更に値引きをかけたらどうなるか、これを読んでいるアナタには分かりますよね(笑)
私のお店は回転してから2年間は売上・客数ともに右肩上がりでしたが、家賃を支払い、材料代を支払い、借入金を返したらお財布の中に殆どお金が残らない状態になっていました。
そしてもう「新しい店」として扱われなくなり、周りに新しいお店が次々にオープンするようになったとき、雪崩のように客数が減りました。
リピート対策というのはクーポン発行ではありません。
クーポンなどなくても来てくださるお客様とどれだけ繋がれるかという行為です。
見境なしにサンキューレターやニュースレターを出した
開店した当初、お客様の声が知りたくてアンケートを書いていただき、お客様のリストをとっていました。
美容院やエステサロンと違って、飲食店はリスト取りが難しいです。
難しいというのは「取れない」ということではなく、闇雲にとれるので顔が分からない、もっと言うと取り方を間違えると数だけ多くて質の悪いリストになるということです。
そして私はその「質の悪いリスト」に毎月サンキューレターやニュースレターを出していました。
またここでも「クーポン」をつけて。
私は開業4年めにメンタルも体調も壊し、一度お店を休んだことがあります。
その時点で持っていた顧客リストは300を超えていました。
ほとんど顔と名前が一致しない。
そんなお客様に毎月出すレターは印刷代30円、切手代80円、原稿作成や印刷、封入にかかる私の時間。
3万円以上のリターンのない経費を毎月支出していたのです。
今私が持っている顧客リストは30,ニュースレターを出しているのはそのうち半分。
ニュースレターを出しているお客様の来店回数は月に3回以上です。
反応率が取りたくて、赤字すれすれの割引価格でチラシを作った
開業4年目に学び直しのためあるマーケティングの学校へ行き、そこでチラシの作り方を学びました。
反応の取れるチラシを作ることで新規集客につなげるというもので、初回の割引価格を原価ギリギリで設定して発行しました。
反応率は3%とチラシにしては驚異的でしたが、結局「安いから試しに来た」というお客様ばかりで次に繋がりませんでした。
パレートの法則(80:20)がありますが、殆どそのとおりになりました。
撒けば撒くほど赤字とは言わないまでも仕込みに追われました。
でも「チラシがだめ」ということではないんです。
私が作った「反応率を取るためのチラシ」が間違っていたということです。
その後、私はチラシはほぼ割引をせず、来店促進ではなくあくまで認知活動の位置づけとして捉えるようになりました。
ポスティングではなく、ハンディングや置きチラシ。
このあたりは「失敗は成功への切符」ですね。
費用対効果を考えずに有償の媒体に広告を載せた
お店を始めると色々な広告媒体の営業さんが来られます。
不特定多数の方に確実に届ける媒体としてオープン当初選んだのが「フリーペーパー」
発行部数によって金額が変わるフリーペーパーは、確かに確実にポストには入りますが見られることとは違う。
10万円近い費用をかけて回収できたクーポンは20枚程度で、全くペイできませんでした。
広告費は「出ていくお金」ではなく、「利益を生み出す先行投資」と考えたほうがいいです。
たとえば、消耗品ならお客様の来店があってこそ使うもので、なければ使わないので無駄にはなりにくいですよね。
でも広告費はご来店がなくてもあっても使うもの。
もちろん、ご来店がなくても「認知」にはなったとは思いますが、認知にお金をかけるには3ヶ月で10万円は小さなカフェにとってはやりすぎです。
自分のお店のスケールでは、どこまで広告費をかけられるかはシビアに計算しておくべきです。
そういう意味で私は開業当初、本当は必要のない「必要経費」を見込みすぎていたと思います。
SNSのフォロワーをお金を出して買った
今はSNSは人々の生活に切っても切り離せないものになっていて、フォロワー数がの多さが一種のブランディングと言われています。
フォロワーが増えれば拡散もされるということで、自動でフォロワーを増やしていく仕組みのようなものを購入して運用していたことがあります。
毎日の投稿で少しずつですがフォロワーの増えていた私のアカウントはその仕組みを使うことで一気にフォロワーが倍以上になりました。
でもどこの誰か分からない人にフォローされて、実際に来店につながるでしょうか。
その仕組みに毎月経費を支出することに意義があるのでしょうか。
意義を感じると思うなら利用したほうがいいと思います。
でも私は半年くらいたったとき、名前も顔も知らない、遠くに住んでいるアカウント(場合によっては海外)からのフォローに意味があるのかと思うようになり、その仕組を利用するのを辞めてアカウントの断捨離を行いました。
仕組みを使うのを辞めたのでフォロワーの数はどんどん減りましたが、投稿を続けて行くことで今は当時のフォロワー数に戻りました。
でも大切なのは「数」ではないと痛感しています。
「知っている人」に確実にフォローされていますか?
割引と引き換えに良いお客様の声をもらった
口コミがものを言う時代、どれだけ良い口コミを書いていただくかは新規集客をする上でとても重要です。
よく見られているポータルサイトやグーグルの口コミに良い評価を出して欲しいですよね。
なので私は口コミを書いてくれたら割引ますと言って口コミを書いていただいていました。
割引までつければ悪い口コミはないだろうと思っていたからです。
お客様はもちろん、お店の良いところを書いてくださったと思います。
でもそれは、私にとって「お店の魅力」として紹介して欲しい内容ではありませんでした。
誰にでも彼にでもお願いして数を稼げばいいものではなく、「響く人に響く」ものではなければならないと思いますし、たとえ自分にとってマイナスの口コミであったとしても、真摯に対応しトラブルシューティングをしていくことで、結果的に来店いただきたい方に届くものと考えています。
要は、何をするにでも心からの誠意がないとだめだということでしょうね。
好きなことだから頑張れると思っていた
開業して2年ほど、毎日午前様の生活が続き、休みも満足に取れず、だからといって大きな利益が上がっているわけでもない。
これが自分がやりたかったカフェの形なのだろうかと思い悩んでいるときによく掛けられた言葉。
「好きなこと始めれたんだから頑張らなね」
この言葉、皆さん激励のつもりで掛けてくださったんだと思いますが、私にとっては呪縛の言葉になりました。
そう、好きなこと始められたんだから、好きなことでお金をいただくなんて贅沢なことなのだからとメンタルも身体もいっぱいいっぱいまですり減らし、結果的に体調不良で営業をお休みすることになってしまいました。
あのとき、少し休んでまた同じことをやっていたら次に体調不良になるのはもっと早くなっていたでしょう。50代の体力低下は40代、いわんや30代とは比べ物になりません。
「好きなことで稼ぐ」のは素敵なことで、みんながみんなそういう環境にはないのだからありがたいこと…だとは思いますが、そのことが他のすべてを我慢すべき理由には決してならないのです。
ワンオペなのにメニューの数が多かった
オープン当初のフードメニューは
-
日替わりランチ
-
生パスタ
-
キーマカレー
の3種類でした。
1年経過したころ、負担の大きいパスタを辞めた代わりにオムライスを始め食材や提供までのオペレーションが全く違う3種類のフードメニューを作っていました。
そして3年目にスタッフがいなくなり、ワンオペで営業するようになっても続けていました。
ワンオペになったからとメニューを減らし、お客様の満足度が下がることが嫌だったからです。
メニューが多ければオーダーがバラバラになる(1組3名様のグループがいらっしゃれば別々のものをオーダーし、取皿を持って行ってシェアされることが多くなる)ため、次のお客様のお料理の提供も遅くなります。
もちろんそれにかかる仕込みも多く、これが長時間労働の原因ともなります。
そして、「メニューの多さ」はワンオペでやっている店舗の顧客満足度には必ずしも繋がりません。
お客様が来店されたその瞬間からオーダーなど聞かなくても料理の提供の準備に入れるような関係性の構築、スピーディーなオペレーション、長時間労働を避けることでいつも溌剌とお客様をお迎えすることの方がずっと大切だと感じています。
ワンオペ営業のお店は、メニューではなく「店主のアナタ」が最大の商品なのですから。
売上低迷を営業時間を伸ばすことで埋めようとした
私のお店は開業当初の営業時間は朝8時から夜8時でした。
2年目に売上アップのために週末だけ23時まで夜営業を始めました。
そのとき、夜営業の準備のために14時から18時まで中休みをとっていました、レストランではよくありますよね。
ですが3年目に売上が落ちてきたとき、その中休みの時間が惜しくなり、休みを取らずにそのまま夜営業に突入しました(ワンオペです)
でも、そもそもアイドルタイムだから中休みを取れていたわけで、その時間に開けたからと行って十分な売上が上げられるはずもありません。
むしろ休まずに夜遅くまで営業することで疲労が蓄積しました。
23時まで営業をしていましたが、結果的に自宅へ帰る途中にコーヒーが飲みたいからと22時頃に来店され、コーヒー一杯で1時間滞在されるお客様のために片付けや翌日の準備が進まず、ありがたい気持ちと裏腹な気持ちが共存し複雑になることが多かったです。
テナントで営業している以上、営業時間外も家賃を払っているのと同じです。
なのでなるべく長い時間お店を稼働させなければなりません。
でもそれはワンオペ店主のアナタの労働ですか?
それともスタッフを雇い任せますか?
それとも別の方法を模索しますか?
SOLD OUT回避をしすぎた
飲食店にとって重要なこと「食材ロス」
ロスはそのまま損失に繋がります。
一時期ロスが出ることがとても怖くて、少なめにしか食材を用意せず、結果「売り切れ」になってチャンスロスになったということがあります。
もちろん少なく用意したことでロスが減ることはいいのでしょうが、前向きではありませんよね。
食材ロスを防ぐためには、少なめに用意するのではなく、「用意したものは売り切る」努力(粘り強さと言いましょうか、根性と言いましょうか(笑)が重要です。
たとえちょっとだけ割引しても売り切れば90%、売れるはずのものがなければゼロです。
「完売」ってなんとなく聞こえはいいけれど、お客様に対して「売り切れました」と伝え、がっかりするお顔を見るのはできればやりたくないです。
日頃からの商品の販売数、曜日による増減、ロスになりそうな時の作戦など、水物と言われる飲食業を水で終わらせないように常に計数管理をしておく必要があります。
定休日を作らなかった
お店をオープンしたての頃、「いつを休みにするか」迷っていました。
半年ほど無休にしたあと、売上の一番少ない曜日である木曜日に定休日を設定しました。
ですが、定休日を作ることで水曜日の食材ロスのリスクが発生してしまうし、定休日とはいえ出勤して掃除やスタッフとの打ち合わせなどをしていたため、「それなら定休日は要らないか」と考え始め、更に週末の夜営業を始めたことで木曜に休みずらくなり、結局無休にしてしまいました。
そのうち疲れが溜まってきて、「たまには休みを作らないと」と週に半日だけお休みをもらってスタッフに任せるやり方を取っていました。
ですがスタッフに「今日はオーナーいないの?」と残念そうにお客様に言われたとお聞きして、また休みが取れなくなってしまいました。
少しでも売上の見込める曜日には営業したいし、でもそれが一体何曜日なのか分からない(水物なので分かるわけないですよね)ため、3年目から曜日を決めず不定休に。
結果、「いつ休んでいるか分からない」「いつやっているか分からない」というお声を聞くようになりました。
「気まぐれで休んでいる」と言われたことも。ショックでしたね。
営業日・定休日・営業時間の変更は告知してから周知されるまでに随分と時間がかかります。
半年くらい経っても「定休日いつ?」「○曜日って休みなの?知らなかった」と言われることが多いです。
不定休で毎月カレンダーをSNSにアップされている方もいらっしゃり、それも一つのやり方だと思いますが、私個人としてはお休みは定まっている方がお客様には分かりやすいのではと考えています。
そして、お店をオープンしたてはその定休日に出勤せざるを得ないことになっていたとしても、少しずつ慣れて効率化が図れて来たときにはきちんと休めるようになる。
そのリズムを作ることが長くお店を続ける秘訣の一つになると思います。
今の私は、定休日は木曜日。
月に1日は自宅で家事の傍ら収支計算などの金銭管理に宛てる日がありますが、その他の日は「定休日に仕事しない」と決め、1週間のスケジュールをやりくりしています。
他店を意識しすぎた
開業前、物件を探すために不動産屋さんを訪れた際、
「このあたりはカフェ銀座だから出店は難しいと思うよ」と言われました。
確かに駅前ということもあり、周辺には10件ほどのカフェがありましたし、私が開業したあとも新規出店が何件もありました。
そしてそれらのお店さんはすべて私の「ライバル」になりました(正確に言うと勝手にライバル視した)
そしてライバルのSNSをフォローして「あのお店は予約で満席なのになぜうちはだめなんだろう」とか、「うちの方がいいモノ出してるのに」とか悪い意味で気にしてばかりいました。
同じお客様を取り合おうとしていました。
もし本当に同じお客様を取り合っているのなら、私のお店が潤っているときに相手のお店は泣いていることになる。
それは自分さえ良ければいいということに繋がりませんか?
自分のお店のコンセプト・ターゲットが決まっていれば他店と比べることはないし、どんなにたくさんのお店が増えて一度は他のお店に試しで行かれることはあっても、本当に自分のお店を気に入ってくださるお客様はまた戻って来られます。
私のお店にも「このあたりではカフェはここしか行かないよ」「自宅の近くにカフェできたけどもう行っていない」と仰ってくださる常連様がいらっしゃいます。
いい意味でライバル=切磋琢磨しお互いを高めて行ける店同士ならいいことですが、ライバル=敵になってしまったらライバル視したほうが負けです。
私は今、同業というだけでSNSのフォローをするのを辞めています。
フォローしているのは「お手本にしたい」お店さんだけです。
世間の原価率に囚われ過ぎた
飲食店の原価率は約30%、FLコストは65%なら優良と言われていますよね。
私のお店のランチは「良いものを普通の価格で」設定してしまっていたため、なかなか原価率30%にすることができませんでした。
30%の原価にすると、量が少なくなり見た目が悪くなるからです。
そこで私は原価率の低いドリンクとのセット販売をすることで原価率30%を保とうとしました。
でも、食べたらさっと退店するラーメン屋さんやうどん屋さんの原価率と、長時間滞在のカフェとで同じ原価率では同様には行きません。
回転のあるお店は30%で続けて行けても開店しないお店は続けられません。
私は世間の原価率だけに囚われて、カフェが提供する「空間」「時間」という目に見えない商品の価値について全く考えていませんでした。
そして長居のお客様にストレスばかり感じていました。
開業5年目、私はカフェでしか味わえない、もっといえば私のお店でしか感じることのできない心地よさ、それをきちんと感じてくださるお客様にだけご利用いただきたいと考え始めました。
私のお店のメニューの価格は一般的な価格を超え、カフェとしては高めの設定です。
そのことを知らずにいらっしゃっるお客様に「普通のメニューはないのですか?」と聞かれることも多いです。
普通とは何でしょうか?
「普通」という言葉ほど、お店にとって悲しい言葉はないはずなのに。
借入金の返済期間の設定が短すぎた
私は結婚しており、自宅にかかる経費(住宅ローンや水道光熱費)を支払う必要がありません。
子供の学費は8割ほど貯蓄で目処がついていたし、その時は「開業できれば他に何も要らない」と思っていました。
自分の食事はお店で取ればいいし、洋服も制服がある、お化粧品もプチプラのものに変えればいい。
好きで始めたことだから休みもさして要らない、子供たちも大きくなりそれぞれの生活があり、休みだからって一緒に出かけることもない、旅行も行かなくていい、だから今までのようにお金を使うこともなくなるだろうと考えていました。
そのため、借入金の返済を月に10万円で短期(5年)で返し切るという返済計画を立てました。
でもその10万円を捻出するために出さないと行けない売上は原価30%としても15万程度必要です。
そして15万円は私のお店の当時の日商でいけば6日ほど必要です。
1ヶ月の1/5の売上を「借入金を返すため」だけに使うのです。
実際に延滞した月はないのですが、すべての経費と家賃、借入金を返済したら財布の中には2000円ほどしか残らなかった月も。
たまに家族にお土産を買って帰りたいと思ってもできない、美容室にも行けない、最低限の衣食住では心は豊かにはなれません。
癒やしの場所を作っているはずなのに、作っている本人がそんなギスギスした生活をしていては見えない空気が漂い、それが3年目にお客様の足を遠のかせた理由にもなっていたかもしれません。お母さんが神経質になると子供はそれを感じ取るというのと似ていたのかもしれませんね。
コロナ禍に入った時、これから先のことを考えると不安になり金融機関に相談に行きました。
その時担当者に言われました。
「返せると思っても返済金額は少なめに、そして長く設定するほうが健全に続けられますよ」と。
借入金はなければないほうがいいのでしょうが、少しのリスクを抱えるほうが人は踏ん張りがきく…ということはあります。
私もこれまでのカフェ経営で、もし返済の必要がなかったり、家賃を払わなくてもいいという環境にいたら、こんなには頑張れず投げ出していたかもしれません。
だからこそ、某金融会社ではありませんが、返済は計画的に。
少しの余裕がこの先何年と続くお店を作れるのだと思います。
食器やカトラリーの数が多すぎた
グラスやお皿、カトラリーの数は悩みますよね。
17席のお店でどのくらいの食器を揃えたらいいのか迷いました。
ランチタイムは2回転を目指していましたので、一度も洗い物をしなくても回るようにと30名分のものを用意しました。
グラスやお皿はロットもありますので、30ピッタリにならないときには多めに。
途中で割れたときのことも考えてのことだったのですが、実際は私とスタッフ2人の厨房では手粗に食器を扱うこともないし落とすことも少ないし、食器を割るということは殆どありませんでした。
2回転営業中、一度も洗い物ができないこともありませんでしたし、本当に忙しすぎて洗い物に手がつけられないことは日常的にはありませんでした。
17席といっても完全に満席になることでもなく(4名テーブルに3名のグループで利用する等)無駄に用意したことで置場にも困りました。
食器は席数×1.2くらいでも足りるのではないかと思います。
ただしこのあたりは、手洗いするのか、私のお店のように食洗機を導入するのかでも多少変わるかもしれませんね。
不必要な拘りの為に揃えた什器が身の丈に合っていなかった
国産果実で作るスムージーの材料を置くために(1ロットが14キロでした)買った冷凍庫。
静かな空間を保つためにと買った消音式のブレンダー。
最初に不要だと思ったものです。
どんなメニューを置くかで什器は変わってきますが、固定資産になるような大きな什器を購入しなければできないようなものは再考の余地ありです。
買ってみて不要必要が分かるというのはどんな買い物も同じなのでしょうが、それを買うために借り入れまでするのですからリスクが高すぎますよね。
開店後に新メニューを導入したり、営業形態を変えたりする時も同じことが言えます。
新しいものを買ってやるのではなく、今持ってるもので新しいことはできないか。
小さく始めて大きく育てるのが良いというのはこのあたりも関係してくるのでしょう。
給排水の整っていない物件にスケルトンで出店した
私のお店はスケルトン物件で、給排水がお店の端までしか来ていませんでした。
私はお店の真ん中にカウンターを置き、オープンキッチンで営業したいと考えていたので、床を削って配管を延ばしてもらいました。
納得の行くお店づくりにはそれも必要ですが、そのために内装工事費がかかったことも事実です。
出来上がった店舗には満足行っているのですが、一度厨房の配管が詰まったことがあり、浚渫に来ていただいたことがあります。
その時工事の方に言われたのが「詰まる場所によっては修繕にかかる費用が大きくなる」
テナント物件の場合、お店の外の配管は大家さんの負担ですが、お店の中は店主の負担。
自分の拘りの実現とそれを保つためのメンテナンスの費用、もしものときの修繕費用をきちんと考えた内装にすることが必要だと思います。
私のお店はもうすぐ8年。見えない、手の届かない配管がいつ詰まってもおかしくない。
一抹の不安を抱えながらの営業です。
お客様のスペース確保のため、自分が我慢すればいいと狭小厨房を作った
お店の真ん中のカウンターは広く取りたい、通路も車椅子やベビーカーが楽に通れるようにしたい、テーブル同士の距離も広めに取りたい。
その代わりに自分が立つ厨房は人一人が立てればいいと通路50センチにしました。
ところがいざ厨房機器が搬入されると自分がイメージしていたよりもずっ狭く、そのときになって初めて「これはまずかったかも」と思いました。
冷蔵庫のドアを開けると斜めに身体を向けないとものが取り出せない、ガスレンジから熱いものを取り出すときに斜めからでは取り出しにくく火傷の危険がある、歩く時も横歩きしないとあちこちにぶつかり、そのことで足腰に負担がかかり、体調不良の一因になったと思います。
また、バックヤードがないためオープンキッチンの狭い厨房では食事や休憩を取ることもできません。
店舗をやる以上、大切なのはお客様。
でもそれ以上に大切なのが自分です。
広告や集客の勉強をまったくしていなかった
広告や集客活動が必要だとは思うものの、具体的にどんなことをどんなふうにやればいいのか全く知らず、前述のように「箱さえキレイにしてれば」「良いものを安く出していれば」と思っていました。
そして視認性のある路面であればお客様が来られると思っていました。
家賃が高くても路面を選んだのはそのためです。
また損益分岐点の計算をするときに、広告宣伝費を全く見込んでいませんでした。
ターゲットについてもなんとなく「忙しい女性」と考えていましたが、忙しさを感じる尺度、何で忙しいのか(仕事なのか、家事なのか、育児なのか、介護なのか)も曖昧で、そのため、メニューの数が増えたり、望まないお客様に悩まされたりしました。
開業して一年後、「もっと周知してもらうのにホームページは必要だろう、お金がかかってもリターンはあるだろう」と契約しましたが、相場を全く知らずに契約してしまいペイできなった上に、途中で営業形態が変わるたびに修正代がかかりました(これは失敗の中でもかなりの黒歴史(笑))
SNSを頑張ればいいと漠然と考え、フォロワー数をお金で増やすこともしてしまいました。
開業して、自分のお店が外から見られるよりはるかに数字上うまく行っていない、解決を見出さなければならないと行った経営塾で初めて耳にした言葉は多かったです。
「宣伝になるから」という言葉で第三者に丸投げで何かをしてもらったものは8割が失敗しています。
その主導権は自分にあるのです。
事業計画が甘すぎた
私は開業にあたり融資を受けるため、事業計画書を書きました。
その事業計画書は融資の担当者にお褒めの言葉をいただくほどでした。
でも今考えるとそれは「融資をする側」から見て綺麗な計画書だったのかなと思います。
回転率ひとつとっても、アイドルタイムに1回転もしないし(だからアイドルタイムと言われる)、カフェでのお客様の滞在時間は私の想定を超えるほど長かったし、机上で描いた原価率と初年度は6%も違っていました。
一日で3000円近くのロスを出したこともあります。
そんなお店としての「下手くそな部分」が事業計画書からは抜け落ちていて、あたかも出来上がってるお店のもの、目標とするものになっていたと思います。
開業して自分が起こす失敗は最初からは分かりませんが、事業計画書は融資担当者に出すような綺麗なものとは別に、最低最悪の状態を想定したものもこっそり作っておきましょう。
もしかしたらそれは、本当に辛いときの自分の心の免罪符になるかもしれません。
開業本に頼り切った
私は開業前にいわゆる「開業本」なるものを10冊近く読みました。
そして頼り切りました。
そこに書かれていることさえきちんとやっていれば間違いないと思っていました。
初めにも書きましたが
開業本に書かれていることは最低限やるべきことで、そこから自分のお店用にカスタマイズしていくことが重要です。
そう考えると開業本は2冊読めば十分で、残りの8冊を読む時間があるのなら、如何にして自分のお店に落とし込み、他店とは違う味を出して行けるのかという作戦を数多く考えておくことが、物件をさがすとか、メニューを考えるとかより大切なのではないかと思います。
お客様は神様だと思っていた
お店をやっている限りは、色々なお客様が来られます。
その中には正直お店にとって困ったお客様、望まないお客様もいらっしゃいました。
でも私は「お客様は神様」と思っていましたので、どんなに嫌なお客様であってもNOということをしませんでした。
特に言えなかったのが退店を促すこと。
休憩が取れない、お店が片付かない、仕込みに取り掛かれない。
水だけでアップセルのないことにもストレスがかかりました。
私は今でも、ひとりでも私のお店を必要としてくださるお客様がいる限りはお店を続けたいと思っています。
でもその「必要」には種類があります。
ランチタイムに満席だった時、その場で次のお店を探されるようなお客様は私のお店が必要なのではなく、「ランチが食べられるお店」が欲しいだけ。
本当のお客様は1時間時間を潰しても来てくださいます。
その違いに気づいた時、本当の意味で私はお客様に対して「NO」と言わなくなりました。
「お客様は神様」ではなく「神様がお客様」になったからです。
まとめ
以上私の失敗25個を挙げてみました。
私のお店はまだまだ失敗継続中です。
人生には失敗はつきもので失敗から学ぶことはたくさんあります。
でも私は性格上、自己肯定感が低く、すぐに「自分はだめ」だと思ってしまいます。
そんな私がまだカフェを続けてられるのは、やっぱり失敗があったからだと思うのです。
失敗、万歳。
こんなダメダメなカフェ店主でも8年続けて、お話聞いています。⇓⇓
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